日韓歴史共同研究委員会第2期報告

http://www.jkcf.or.jp/history/second/index.html 日韓歴史共同研究委員会 第2期
http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010032301000547.html 日韓歴史研究報告書の要旨 - 47NEWS


 現代政治外交史に専攻が極端に偏っていた日中歴史共同研究よりは、非委員の研究を含めれば、広範な分野をフォローしているが、要所を「保守派」が抑えているために、日本国内でも存在する個々の研究者の対立が「国家間の対立」にすり替えられている印象(それはメディアの報道の仕方にも責任がある)。政治史や教科書問題ではわざと右傾的な研究者を立てて、対立を煽っているとしか思えない。
 特に山室建徳は「共同研究は不毛だった。歴史研究への姿勢が日韓では違いすぎる」と、いかにも韓国の歴史研究が「政治的」で自らは「実証的」であると言いたげだが、実際は山室のような人は保守的ナショナリズムにシンパシーを寄せており、自らの政治性にあまりにも無自覚である。今回の彼の論文「教科書編纂から見た歴史教育」は、全面的に「戦後」歴史教育を否定し、家永訴訟の意義にすら言及せず、ましてや教科書批判の文脈の歴史的変容や、教育実践の実際には目もくれず、旧態依然の反共イデオロギーを礼賛する内容である。「教科書は子どもに特定のイデオロギーをたたきこむ手段ではない」と言いながら、右翼イデオロギーを一切批判せず、「多様な国民意識を尊重」と言いながら、平和主義や民主主義に基づいた教育をその「多様」性には含めないのはあまりにも恣意的である。李讚煕の冷静でもっともな批評に対するコメントも全く反論になっていない。歴史教育の研究業績のほとんどない人だから当然なのだが。