自衛隊の「反逆」

 44普通科連隊の連隊長だった1等陸佐は先月10日の日米共同訓練の開始式で「同盟は『信頼してくれ』などという言葉だけで維持されるものでもない」などと訓示し、北沢防衛相は同12日、文書による注意処分とした。
 防衛省によると、この直後、第11旅団の中隊長の3等陸佐は、榛葉副大臣長島昭久政務官ら複数の同省幹部に「連隊長の発言は全くおかしくない」「自分も部隊で同じ事を言っている」などというメールを送っていた。同省は正規の手続きを経ずに意見具申したことが規則違反だとして、今月3日に内規に基づく口頭注意とした。
 第2特科連隊(旭川駐屯地)でもほぼ同時期、中隊長の1等陸尉が部内の朝礼で「連隊長の発言は間違っていない」「鳩山総理はいいかげんだ」と訓示したという。 (読売新聞 2010/03/25 03:11)

 「戦前は恐慌と政治不信の深刻化が軍部の台頭を招いたが、現在では軍部に相応する勢力が存在しないのでそういう心配はない」という類のオピニオンをしばしば見かけるが、今回のような事件があるとそれほど楽観的にはなれない。一般の公務員と異なり、武力を有する武官の「批判」は「脅迫」の意味を帯びる。それでいて文民統制を弱体化させる(制服組の権限拡大)「改革」は当の民主党政権下でも継続しているのも問題。
 ちなみに教職員組合の裏金問題を「企業・団体の政治献金」という観点から「教員の政治的中立」の観点にすり替えている連中はこれを批判しないのか。政府と何ら直接の任命関係のない教員には政府批判を禁じる一方で、首相と指揮命令系統のある自衛官の政府批判は賞讃するのは明らかなダブルスタンダードだ。