山田昌弘『少子社会日本』(岩波書店、2007年)
- 作者: 山田昌弘
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/04/20
- メディア: 新書
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もう一度、日本で少子化が進んだ要因を復習しておこう。
一つは、経済的要因であり、①結婚や子育てに期待する生活水準が上昇して高止まりしていること、その反面で、②若者が稼ぎ出せると予想する収入水準が低下していることである。
もう一つは、男女交際に関する社会的要因であり、③結婚しなくても男女交際を深めることが可能になったという意識変化、および、④魅力の格差が拡大していることである。(p.200)
本書の最大の成果は、一般の年長者の「思い込み」に反して、若い世代の大半に結婚願望があるという統計上の根拠を提示したことと、一方で、多くの人々が漠然と感じていた結婚における「男は経済力、女は顔」というハードルが厳然と存在することを実証したことである。
また、女性の社会進出が未婚・晩婚を増加させて少子化を招いたという家父長制支持者の俗論に対し、実際はその逆で結婚できないから女性の就労が増えたという見方を提示したのも重要である。
山田の立論で問題があるとすれば、高度成長期をあまりにもサクセスストーリーとして語りすぎている点だろう。「昔は良かった」という意識が強すぎると、「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業への郷愁も強まり、女を養えない貧しい男はますます結婚できなくなるだろう。
結局のところ未婚・晩婚の増加及び出産の減少の引き金になったのは、非正規雇用の増大と成果主義の導入による雇用の不安定化にあることははっきりしている。やはり非正規雇用の正規化が少子化問題の観点からも必要だと痛感させられた。