小田部雄次『華族家の女性たち』(小学館、2007年)

華族家の女性たち

華族家の女性たち

 あまりこういうことは言いたくないが、かつてファシズム研究で鋭い論文を書いていた気鋭の研究者が、今や週刊誌やワイドショーに登場する「皇室ジャーナリスト」みたいな仕事ばかりしているのが悲しい。『ミカドと女官』あたりまでは過去に例のない斬新な分析と天皇制に対する批判的視角があったが、今は新著が出てもルーティーンワークの繰り返し。西暦を捨て、元号を主として使うようになってはもはやどうしようもない。粟屋先生は最近の彼の仕事をどう評価しているのだろうか。
 華族制度下におけるジェンダーの拘束性や「閨閥」の政治的機能について、もっと突っ込んだ分析を期待したが・・・。エピソードを羅列するだけなら歴史学者でなくてもできる。
 それだけに戦前の華族への「のぞき見趣味」は満たせるだろう。「昔のセレブ」への単純な憧憬とゴシップへの欲求を抱いている向きには最善の書と言える。