2008年2月8日衆議院予算委員会における志位和夫の質疑2

○志位委員 研究会をつくるというんですけれども、根幹にかかわる問題を議論するというんだけれども、全く白紙で丸投げじゃないですか。規制を強化するのか、それとも緩和するのか、その方向性すら出されていない。そこをきちんと出すのが政治の責任だと私は思います。
 先ほど、総理が、日雇い派遣の雇用の安定のためのガイドラインをつくったとおっしゃいましたね。このことだと思いますけれども、「日雇派遣労働者の雇用の安定を図る」とあるんですけれども、厚生労働省がつくったものですね。私はこれを読んで驚きました。安定した日雇い派遣というのはあり得ないんですよ。日雇い派遣というのは、どんな形であれ究極の不安定労働なんですよ。ですから、こういうものを法律で認められていること自体が私は問題だと思います。
 この指針を読みますと、例えば、労働条件を書面で示すことがあたかも雇用の安定につながるようなことも書いてあります。
 私はここに持ってまいりましたけれども、これは契約書の束です。これは、派遣会社フルキャストから派遣されて沖電気関係の会社で二年間にわたって日雇い派遣として働かされていた二十六歳の女性に、毎日毎日一枚ずつ、一日単位で渡されていた書面での労働契約書です。この契約書の一番下にはこう書いてある、契約更新可能性ありと。
 これは、更新の可能性ということは、更新されない可能性もあるということですよ。すなわち、あすの保証がないということです。毎日毎日、あしたの仕事はわかりませんよというこの紙を渡されている。こういうものを渡しなさいよということがこの指針に書かれているわけですけれども、こんな紙をもらってだれが安心しますか。現にこの女性は、二年間働いたあげく、最後に、もう来なくていいの一言で解雇されております。およそ現実を見ない机上の空論をやっているのが、私は厚生労働省だと思う。
 もう一点言いたいと思います。今度は総理の認識を聞きます。
 日雇い派遣労働者が現実に行っている仕事は、そのほとんどがその日限りの業務ではないんですよ。例えば、物流倉庫での荷さばき、宅急便の荷物の仕分け、ファミリーレストランのウエートレス、製造現場でのライン作業など、そのほとんどが恒常的に行われている業務なんです。
 それまでは正社員などの直接雇用によって担われていた仕事が、相次ぐ派遣労働法の規制緩和によって日雇い派遣によって担われることになりました。特に、一九九九年に派遣労働を原則自由化したことが、登録型派遣と結びついて日雇い派遣という働かせ方をつくり出し、それが今どんどん広がっているわけであります。
 これは総理の認識を伺いたい。今度は、総理、答えてください。日雇い派遣という働かせ方があらゆる職種に際限なく広がっていく、そんな社会にしてしまっていいんでしょうか。ここは歯どめをかけるべきではありませんか。総理の見解を伺いたいと思います。今度は、総理、答えてください。歯どめをかけるべきではないか、日雇い派遣に。

○舛添国務大臣 その前に、誤解があるといけませんので、はっきり申し上げます。我が厚生労働省は、労働者を守るために、労働法令に基づいてきちんとしたことをやっております。
 今、日雇い派遣指針の概要ということで引用されましたけれども、例えば、できる限り長期間の派遣を行ってくれ、派遣労働者の知識、技能を向上させる訓練をやれ、就業条件をきちんと明示し、約束どおりに働かせろ、それから、今、安全でなくて指が凍傷になったとかいろいろなことをおっしゃいましたけれども、それについては、雇い入れ時の安全衛生教育、危険有害就業時の安全衛生教育を確実に行う、情報公開を積極的にみずから行う、労働者派遣法、労働基準法等の違反をしない、こういうことを厳しく指導しておりますので、そのことを申し伝えておきます。

福田内閣総理大臣 私も、日雇いという形というのは決して好ましいものではないと思っております。

○志位委員 好ましいものではないということが答弁されました。これは非常に重要な答弁であります。
 私は、それならば、研究会に丸投げということにしないで、好ましくないという方向での法改正に踏み切るべきだ。労働者派遣法を改正して日雇い派遣は禁止をする、そして安定した雇用に転換を図っていくことを私たちは強く要求したいと思います。そのイニシアチブをぜひ総理が果たしていただきたい。
 次に進みたいと思います。
 この間、グッドウィルという派遣最大手の企業に対する事業停止処分が行われました。建設や港湾などへの違法派遣、二重派遣偽装請負、実態は派遣であるにもかかわらず請負を偽装した無法など、派遣業界に無法が蔓延しているということが示されました。
 同時に、この事件が明らかにした重大な問題は、現行派遣法が悪質な派遣元企業、派遣先企業を事実上保護する法律になっていることであります。
 このパネルは、グッドウィル問題での処分と告発についての図でありますが、ごらんになっていただけばわかりますように、派遣元であるグッドウィルなど三社は、違法行為をしても行政処分にしかなっていません。グッドウィルが事業停止命令、グローバルサポートが改善命令、佐川グローバルロジスティクスが改善命令、どれも行政処分であります。派遣業の許可をとっていない東和リースだけが職安法違反で刑事告発されております。同じ違法行為をしていても、派遣業の許可をとっている会社は刑事告発を免れ、行政処分で済む。つまり、派遣法が派遣元保護法になっているのであります。
 さらに見ていただきたい。一番下の派遣先企業、つまり派遣労働者を受け入れている企業は、何の処分もされず、企業名の公表すらされていません。
 派遣先企業は違法行為の共犯者だと私は思いますよ。一緒になって違法行為をやったわけです。ところが、ここには何のおとがめもない。派遣先企業はさらに厳重に保護されております。
 これは数字を今度は厚労大臣に伺いたいんですが、派遣法違反ではこの間、偽装請負も大問題になってきました。トヨタ自動車キヤノン松下電器東芝、NTTといった大企業のグループ会社がこれを行ったと報じられておりますが、偽装請負が摘発された派遣先企業、すなわち受け入れ企業のうち、勧告処分、公表処分という行政処分を受けたのは何社ですか。

○太田政府参考人 お答え申し上げます。
 偽装請負等の労働者派遣法違反によりまして派遣先が勧告及び公表の対象となった事案はこれまでのところございませんが、これは、前段階の措置であります是正指導によって違法状態の改善が行われているということでございます。

○志位委員 一社もないんですよ。勧告処分もなし、公表処分もなし。偽装請負では、一番大もうけしているのは派遣先企業、受け入れ大企業です。それなのに、一社も公表されず、事実上のおとがめなしです。
 今いろいろ偽装が問題になっておりまして、そのたびに会社の社長、会長が謝罪会見というのを必ずやりますね。ところが、偽装請負に限っては、ただの一社も謝罪会見をやった会社はありません。公表すらされない。これは、私は全く異常と言うほかないと思います。
 それでは、労働者の側はどうなのか。
 私は、派遣法が労働者を無法行為から守るために一体機能しているのかどうか、これを見る必要があると思います。グッドウィルの無法一つとっても、事業停止処分は当然ですが、それによって一番の被害者となったのは、この企業に登録して働いていた労働者です。是正指導しているとさっきおっしゃいました。しかし、偽装請負が摘発されて是正指導がなされた場合、偽装請負で働かされていた労働者がどうなったか。
 厚生労働大臣に伺いたい。厚生労働省は、二〇〇七年三月末に後追い調査をやっているはずです。調査した労働者が何人か、摘発後、雇用期間の定めのない直接雇用、すなわち正社員となった労働者が何人か、報告してください。二つの数字でいいですよ、時間がないですから。

○太田政府参考人 今御指摘の調査でございますけれども、十八年十二月に是正指導の対象になった事案の十九年三月末の状況について確認したものでございます。
 このうち、偽装請負を理由に是正指導を行った事案二百十九件において、請負で働いていた労働者で確認の対象になった者は八千四百四人でございます。このうち、発注者におきまして直接雇用された者が四百六十七名、期間の定めのない直接雇用となった労働者が十八名ということでございます。

○志位委員 今答弁がありました。これは、偽装請負が摘発された結果、労働者がどうなったかについて、厚生労働省に提出を求めた数字であります。
 今答弁でも確認されましたが、偽装請負で働かされていた八千四百四人のうち、摘発によって期間の定めのない直接雇用、すなわち正社員となったのは十八人です。わずか〇・二%ですよ。離職を余儀なくされた人は三百六十一人もいる。約九割の人たちは、派遣、請負という不安定雇用のままであります。不安定雇用の改善には全く役立っていない。
 これは総理に伺いたい。つまり、違法行為が摘発された場合、現行派遣法というのは、派遣元、派遣先の企業は保護するけれども、労働者は保護していないんですよ。これが現行の法律ですけれども、このシステムはおかしいと思いませんか。今度は総理に伺いたい。これは基本の問題ですから、総理、答えてくださいよ。総理、おかしいと思わないかということです。

○舛添国務大臣 今委員が指摘になったような現実の数字が出ております。
 こういう状況に対して、今厚生労働省としては、ハローワークなどを含めてこの方々の雇用を促進する、そして常用労働者の方に変わってもらう、そういう施策を全面的に行っているところでございます。

○志位委員 企業を保護して労働者を保護しないのはおかしいと思わないかと聞いているわけです。それに対する答えがない。総理、答えてください。

福田内閣総理大臣 厚労省も努力はしていると思います。
 偽装請負等の労働者派遣法違反の是正指導に際しては、労働者の雇用が失われないように、そういう観点から、派遣元、派遣先、双方の企業に対して、適正な方法で改善するように指導をいたしておるところでございます。

○志位委員 おかしいじゃないかという質問に対するお答えがなかった。
 雇用が失われないようにと言いますけれども、見てくださいよ、正社員になったのは十八人、離職されたのは三百六十一人ですよ。雇用を失った人の方が多いんですよ。これが実態なんです。
 次に、私は、根本的な問題をさらに聞いていきたいと思います。
 そもそも、労働者派遣制度について政府は何と言ってきたか。労働基準法職業安定法では、人貸し業というのは厳しく禁止されております。ですから、政府は、派遣労働を導入するときに、これはあくまでも例外だ、臨時的、一時的場合に限る、常用雇用の代替、正社員を派遣に置きかえることをしてはならないという条件をつけてきたと思います。
 政府は、これまでの国会答弁で、派遣労働は一時的、臨時的場合に限定し、常用労働を代替する、リストラの手段として使われることは絶対にあってはならない、企業のリストラにこたえて不安定な低賃金労働力がこれによって拡大するようなことはないようにしなければならないなどと繰り返し言明してきました。
 総理に確認しておきたいと思います。
 常用雇用の代替、すなわち、正社員の代替として派遣労働を導入することはあってはならない、この原則は今においても変わりませんね。確認するだけです。これは大事な原則の確認です。

福田内閣総理大臣 現在でも、この労働者派遣制度を臨時的そして一時的な労働力の需給調整制度として位置づけているということに変わりはございません。