山口二郎の「事業仕分け」批判

 「失望の理由はいくつもありますが、主に費用対効果のものさしで政策を切るという考え方と、東京目線が甚だしすぎることかな。政治というのは費用対効果という物差しに合わないことをするためにあるのです。政治的な決断で行う領域の"仕分け"が存在しなかったことが、政権指導部の最大の失敗です。
 一方で民間の仕分け人は東京の人間で占められていました。否定される側の人間のことは、まるで考えられていない。農道も地方交付税交付金も無駄だという先入観でバツをつけていく。財務省、地方を邪魔者扱いする人々が、この機会に地方いじめをしたという印象です」
 (中略)
 「事業仕分けには思想がない。浮かせた財源で福祉国家を目指すとか、そういった中身の以前に、何をどうしたいという発想そのものが欠落している。現状を崩すことだけが目的になっていて、スクラップ・アンド・ビルドのビルドの部分がないんです」 (山口二郎の発言、斎藤貴男「民意偽装 第7回 事業仕分けの『思想』」『世界』2010年3月号、p.277)

 山口氏の発言に完全に納得したのは久しぶり。「仕分け」が含有する構造的問題を的確に批判している。
 問題はこのコメントが「雑談」混じりのインタビュー中でなされたということ。自分の論文で堂々と本格的な批判をやって欲しかった(同じ号に掲載された山口論文の方は全然ダメ)。こうなることは政権交代前から予測可能だったのだから(少なくとも私は一昨年の時点で民主党の歳出削減路線の危険性を指摘していた)、あえて目を瞑って「無条件政権交代論」で民主党を甘やかし、一部の有権者を騙した不明を恥じるべきである。