経済同友会による「企業・団体の政治献金禁止」提言の深層

http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2009/pdf/100215a.pdf

 各政党が政党から独立した別法人として設立する政党シンクタンクに対してのみ、企業・団体が寄付をできる仕組みを構築する。政党シンクタンクは、政治インフラとしての「政策研究・立案・調査」および「人材育成」のみの業務を担うこととし、政党シンクタンクから政党への資金の移動を禁止する。また、各政党シンクタンクへの寄付の上限は、衆参両院の議席数と直近の衆参両院の選挙における得票数に基づき規制することも検討に値する。
(中略)
 政治インフラ整備に貢献するもう一つの方法として、企業や各種団体が資金を拠出して政策立案支援機構を設立する仕組みが考えられる。各政党が民間シンクタンク政策評価や政策立案を委託したり、外部機関に人材育成を委ねる際には、機構が委託研究費や委託教育研修費を直接支払うことになる。機構が支払う費用は、政党シンクタンクへの寄付と同様に上限を定めることで、公平性を担保することも可能である。
(中略)
 現在の政党助成金は、政策立案補助費として一元管理することとし、その他の政治資金とは区分して処理することを義務付けるべき。さらに、健全な二大政党制を確立するためには、野党の政策立案能力の強化や情報格差の是正が重要な課題であり、一定条件を満たす野党会派に対する補助(日本版ショートマネー)の導入を早急に検討すべきである。

 経済同友会の意見書「『政党による政策本位の政治』の実現に向けて―マニフェスト政治の確立と政治資金のあり方―」より。表向き企業・団体の政治献金全面禁止を標榜する一方、政党のシンクタンクへの企業の「寄付」を制度化することで、政党の政策決定プロセスを財界がコントロールする狙いがある。「政治主導」に適応させた新たな「政財抱合」システムを模索している。意見書では言及していないが、現行の公営シンクタンク(大半は独法扱い)の民営化を前提としていると考えられ、政策策定や人材供給の「企業化」を通して、より効率的に財界の意思を国家意思に反映させることを目指していると言えよう。