現在の雇用は「イス取りゲーム」

(前略) 「『いす取りゲーム』としての雇用」という場合、いすの数がちょうど「雇用の総量」(正確には雇用ないし労働力に対する需要の総量)を示している。そして、いすからあぶれるとは、ほかでもなく失業を指す。
(中略)
 いすからあぶれること、つまり失業は避けたいので取り立てられるように働く(しばしば過労となる)。労働生産性を上げると、上記のようにいすの数がさらに減少するのでますます競争が苛烈になる。労働強化で労働時間を増やすことは、いわば1人分以上のいすを占有することを意味するから、そのぶん、いすからあぶれる者が増える。こうして一方における「過労」と他方における「失業」(ないし非正規労働者)が同時に(相互補強的に)存在する結果となり、事態が一層深刻化していく。特に新規参入者である若者の状況がそうである。(後略) (広井良典「『いす取りゲーム』としての雇用」『週刊東洋経済』2008年7月12日号、p.9)

 労働時間の削減が「イスの増加」の前提となる。過労問題と雇用待遇差別問題の結節点。同時に市場経済の「内部」では雇用総量が劇的に増えることはないので、「外部」に雇用を創出する必要がある。