2010-01-01から1年間の記事一覧

山口二郎の「事業仕分け」批判

「失望の理由はいくつもありますが、主に費用対効果のものさしで政策を切るという考え方と、東京目線が甚だしすぎることかな。政治というのは費用対効果という物差しに合わないことをするためにあるのです。政治的な決断で行う領域の"仕分け"が存在しなかっ…

橋本健二『「格差」の戦後史 階級社会 日本の履歴書』(河出書房新社、2009年)

「格差」の戦後史--階級社会 日本の履歴書 (河出ブックス)作者: 橋本健二出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2009/10/09メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 4人 クリック: 90回この商品を含むブログ (23件) を見る 戦後日本の階級構造変遷史。資本家/…

労組が特定政党と結びつくことの功罪

http://www.masrescue9.jp/worker/totsuka.html 労働組合が腐敗する主な原因に「一党支持」があるのではないだろうか。労働組合が政治活動を行うことは大事な役目だが、その本来の意義を忘れ、政党と癒着し堕落した結果が「一党支持」なのだ。その行き着いた…

労働者派遣法改正の骨抜き

社民、国民新両党は、派遣先の責任を強化する規定を設けることなど、より保護を強める方向で修正を求めていた。特に社民党の主張は強く、16日には党首の福島消費者相が記者会見で、党の修正案を発表した。 この日は、社民党の重野幹事長が厚労省の担当者と…

経済同友会による「企業・団体の政治献金禁止」提言の深層

http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2009/pdf/100215a.pdf 各政党が政党から独立した別法人として設立する政党シンクタンクに対してのみ、企業・団体が寄付をできる仕組みを構築する。政党シンクタンクは、政治インフラとしての「政策研究・…

政権交代でますます「密室化」が進む政策決定過程

昨年9月の政権交代以来、政府の審議会の多くが休眠状態にあることが、共同通信の調べで13日分かった。「政治主導」を掲げる鳩山政権が、官僚が舞台回しを担う審議会に距離を置き、在り方を見直しているためだ。 代わりに、各省の政務三役でつくる検討チー…

卓越性の「自覚」と分断の連鎖

「わたしは高等中学六年で中退ですよ。大学を出て予審判事になったポルフィーリーさんのような人に対しては、嫉妬もあるし、悔しさもある。警察署の事務室で召喚状で呼び出された人々の愚痴や言い逃れを聞くという生活を続けていると、事件が起こる度に颯爽…

松井慎一郎『河合栄治郎 戦闘的自由主義者の真実』(中央公論新社、2009年)

河合栄治郎 - 戦闘的自由主義者の真実 (中公新書)作者: 松井慎一郎出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2009/12/18メディア: 新書購入: 1人 クリック: 40回この商品を含むブログ (19件) を見る 河合栄治郎の評伝。著者は相当河合に入れ込んでおり、通説で…

小沢一郎のどこが「ハト」なのか?

小泉劇場で「カイカク」という名の悲喜劇が上演された後に、私たちは小沢か小泉かという選択を迫られている。 どちらも選びたくはないという人が多いだろうが、敢えて図式化して言えば、小沢は個人悪であり、小泉(及び竹中平蔵)は構造悪である。そして、東…

あの男が民主党代表になる日

6日で就任2年となった大阪府の橋下徹知事の記者会見を分析すると、(中略)過激な発言が多い一方で、民主党やその閣僚を持ち上げる回数も増えている。 (中略)知事は政党を批判する際は「○○党」と呼び、持ち上げる時は「さん」をつける傾向がある。2年間…

エラスムス『痴愚神礼讃』(渡辺一夫訳、岩波書店、1954年)

痴愚神礼讃 (岩波文庫 青 612-1)作者: エラスムス,渡辺一夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1954/10/25メディア: 文庫 クリック: 6回この商品を含むブログ (2件) を見る 世界史の教科書で名前だけは知っていたが、読んでみたらこれがなかなか痛快。500…

「ビジネスの道具としての歴史」と「ナショナリズムの道具としての歴史」のあいだ

加藤 最近いい傾向だと思うのは、日本をどうにか愛したいんだけれども愛し方がわからないがために、手近な国をさげすんだりすることでナショナリズムを守ろうというような動きが収まって、チャイナインパクトで本当に日本が抜かれる瞬間が予想できるように、…

湯浅誠の「地域主権」徹底批判

http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10446403104.html しかし、いまナショナルミニマム(政府がすべての国民に保障する最低限度の生活水準)は、「地域主権」「地方分権」という流れの中で、軽視されています。最近では、地方自治体の仕事の内容や方法を国が…

石川公彌子『〈弱さ〉と〈抵抗〉の近代国学 戦時下の柳田國男、保田與重郎、折口信夫』(講談社、2009年)

〈弱さ〉と〈抵抗〉の近代国学 戦時下の柳田國男、保田與重郎、折口信夫 (講談社選書メチエ)作者: 石川公彌子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/09/11メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 64回この商品を含むブログ (19件) を見る 本居宣長や平田篤胤の…

疎外されし者の「敵意」の行方

あなたがたが私のような大逆犯人の出ることを欲せず、今の社会の繁栄と維持を望まんとするなら、速やかに誤まった権力の行使を改め、民の心を心として、虐げられたる人々を解放し、万民平等の社会の実現に努力せよ、然らざれば我七度生れ変っても、大逆事件…

政府スポークスマンの露悪的発言

http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010012601000642.html 平野博文官房長官は26日午後の記者会見で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先選定をめぐり、地元自治体の合意がなくても「法律的にやれる場合もある」と、法的措置による決着の可能性に…

「事業仕分け」と音楽芸術

東条 今度の事業仕分けの影響も芸術文化振興基金などに出てきました。日本の音楽界に暗雲が漂い始めた感がありますね。自主運営オーケストラにとっても苦しい時代になりそうです。 山田 「東京の夏」も今年で終わりましたしね。 片桐 そうでしたね。今は文化…

「野党内与党」と「翼賛国会」化

http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010012501000699.html 7兆2千億円規模の追加経済対策を盛り込んだ2009年度第2次補正予算案が25日夜、衆院本会議で与党と公明党、みんなの党などの賛成多数で可決された。自民、共産両党は反対した。雇用保険法改…

飯田道子『ナチスと映画 ヒトラーとナチスはどう描かれてきたか』(中央公論新社、2008年)

ナチスと映画―ヒトラーとナチスはどう描かれてきたか (中公新書)作者: 飯田道子出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2008/11メディア: 新書 クリック: 8回この商品を含むブログ (22件) を見る 前半はナチス政権下の映画政策の実相(検閲によるランクづけ)…

「自己責任」と「自力救済」のあいだ

http://www.j-cast.com/tv/2010/01/22058512.html 「今の自分は努力しなかった結果だ。つい自分を責めてしまう」「相談すれば負け組になる」「1度でも助けを求めたらそこで終わり」……。「自己責任論」のオンパレードである。 (中略) では、どうすればいい…

歴史叙述における「あるべき民衆像」の押しつけという問題

いうまでもなく歴史学は、あったことを発掘し意味づけ再構成してゆく学問である。民衆の歴史についても、もとよりおなじことがいえる。しかし運動史の自転は、あるべき民衆像の強調に、場合によるとおちいるおそれがなくもない。そのとき歴史叙述は、国民の…

橘木俊詔、山森亮『貧困を救うのは、社会保障改革か、ベーシック・インカムか』(人文書院、2009年)

貧困を救うのは、社会保障改革か、ベーシック・インカムか作者: 橘木俊詔,山森亮出版社/メーカー: 人文書院発売日: 2009/11/20メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 114回この商品を含むブログ (17件) を見る 経済学の橘木と社会政策学の山森の貧困問題に関…

「地域主権」と「改憲」の抱き合わせ

http://www.soumu.go.jp/main_content/000051161.pdf 地方自治法は、厳格な二元代表制を採用しているが、長と議会が対立的な関係になって、住民の意見が適切に反映されず、また、効率的な事務の処理を阻害していることもあるのではないか。地方自治体の基本…

「変革主体」の「条件」

この戦争はどうもおかしいのじゃないかと言っている人が、戦争中にもいたのを、私は知っています。代表的なのはうちの母親で、共産青年同盟に加わっていた夫と一緒に農地解放をやってるうちに自分でも勉強して、町中の鼻つまみになっていた。ただし薬品をた…

坂野潤治編『自由と平等の昭和史 1930年代の日本政治』(講談社、2009年)

自由と平等の昭和史 一九三〇年代の日本政治 (講談社選書メチエ)作者: 坂野潤治出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/12/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (7件) を見る 1930年代半ばの政治言説における「自由」と「平等…

佐谷眞木人『日清戦争 「国民」の誕生』(講談社、2009年)

日清戦争─「国民」の誕生 (講談社現代新書)作者: 佐谷眞木人出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/03/19メディア: 新書 クリック: 13回この商品を含むブログ (12件) を見る 日清戦争は東アジア史において近代と前近代を分かつ最も重要なターニングポイントだ…

「希望は火事」だった明治初年の貧困層

されば家に病人の出来るか不具者のありて食うこと能わざるに至れば、ただ世間に火事のあらんことを望むなり。その故は焼け跡に行きて釘を拾い意外の銭儲けあればなり。近来は火事もなきゆえ失望し居るとは世は様々のものなりかし。かかる墓なき社会にてもそ…

深谷克己『江戸時代の身分願望 身上がりと上下無し』(吉川弘文館、2006年)

江戸時代の身分願望―身上りと上下無し (歴史文化ライブラリー)作者: 深谷克己出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 2006/10メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (5件) を見る 近世身分制における身分上昇願望=「身上がり」の実相を明らかに…

「誤報」と行政不信と社会保障破壊

http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10432612600.html 「今回誤った報道が続いているのは、宿泊施設における管理体制の不備が大きな原因ではないかと推察されます。」 「東京都も努力はされているようですが、こうした管理体制の不備の中で、正確な情報が流…

リベラリズムとコミュニズムは「現在」の矛盾を「現在」において解消できないが故にファシズムに敗北するという指摘

1930年代を例にとります。それは大不況が続き、大量の失業者が氾濫した時期です。この時期に「自由主義」は放棄されてしまいました。(中略)市場経済を放置しておいても、自動的な復原力がない。不況は循環的でなく構造的なものでした。 世界的に見て、…